2015年度の介護報酬改定に向けて、徐々に内容が決まってきました。
消費増税が延期されたことによる影響も懸念されていますが、実際にどのような改定になりそうなのか日経新聞の記事「介護費「賃上げ」除き抑制 厚労省3年ぶり改定、増税延期響く(2014年11月27日朝刊)」と「介護報酬を最大3%引き下げへ 9年ぶり、利用者負担軽く(2014年12月16日朝刊)」を元にご紹介します。
増え続ける介護保険の総費用
高齢者の増加に伴い、介護保険の総費用は年々増加しています。
しかも、その増加ペースが非常に早く、ここ数年は5000億円前後の規模で推移しています。
それに歯止めをかけるために介護報酬を抑制する方針だということですね。
賃上げにつながる財源は増やす方針なので「抑制」といった表現になっていますが、介護報酬は一部引き下げになる予定です。
介護報酬の引き下げが実現すれば、2006年度以来9年ぶりとなります。
ちなみに、介護報酬改定年度ごとの介護報酬の増減率は以下の表のとおりです。
年度 | 増減率(%) |
---|---|
2003 | ▲2.3 |
2006 | ▲2.4 |
2009 | +3.0 |
2012 | +1.2 |
2015 | ▲? |
介護報酬の引き下げで得する人、損する人
介護報酬が引き下げられた場合、得をする人と損をする人が出てきます。
【得する人】
・介護サービス利用者
・(国、地方自治体)
・(介護保険料を払っている人)
介護サービスを利用している人は、基本料金が下がるわけですからその分支払うお金が下がります。
例えば、介護度5の人が特別養護老人ホーム(特養)で生活する時の施設サービス利用料は、月額約28,000円です。もし、特養の介護報酬が3%下がった場合『28,000×0.03=840』なので月額840円の負担減になります。
ただし、特養の相部屋料金や、光熱費について自己負担額の増額が検討されていますので、実質的に自己負担額が増える人も多そうです。
【参考】
国や地方自治体は、当然ですね。
得するという言い方はおかしいのですが、社会保障費の抑制がこの介護報酬引き下げの目的ですから。
それから、これも得という言い方はおかしいのですが、介護保険料を払っている人についてです。
介護保険料は、介護報酬改定と同様に3年ごとに見直しがされています。
もし、介護報酬の引き下げによって介護費用が抑えられれば、介護保険料の引き上げ幅も少なくなるかもしれません。
まあ減額は難しいでしょうけどね。
【損する人】
・介護事業者
・(介護事業所で働く人)
逆に損をする人は、介護事業者です。
サービスに対する対価の単価が下がってしまうわけですからね。同じサービスをしても収益が下がってしまうことになります。
収益が下がるわけですから、そこで働く人の給料も下がる可能性があるのは自然な流れですよね。
ただでさえ低賃金で人手不足に悩む介護現場です。給料は下がらないようにと「処遇改善加算」を増額する方針になっています。
また、介護事業の種類によっては、他の業種に比べて収益が上げやすいようになっているのではないかとの指摘もあります。
デイサービス(通所介護)や特別養護老人ホームなどの、事業者の利益率が高くて利益余剰金を蓄えているところから介護報酬を下げようという方針になっています。
【参考】
2015年度介護報酬改定「3つの柱」
今回の介護報酬改定では、大きく3つの柱に分けられます。
表にまとめるとこんな感じ↓です
第1の柱「介護職員の賃上げに充てる費用の増額」
非正規社員を正規社員にしたり、出産や子育てを支援したりといった処遇改善に取り組む事業者に「処遇改善加算」を増額します。
消費再増税で財源を確保する予定だったので、増税の延期で賃上げ幅が縮小してしまう可能性があります。
賃金は最大で月1万円程度上げる予定でしたが、実際の上げ幅がどうなるのか要注目です。
【参考】
この賃上げは、介護業界の慢性的な人手不足を改善させるための施策ですね。
介護職員の平均賃金は月額約24万円と、全産業の約32万円と比較して8万円もの開きがあります。月1万円の賃上げでは全産業の平均賃金に到底及びませんが、急激な賃上げは難しいでしょうからねー。
第2の柱「賃上げ以外の費用の抑制」
高齢化による社会保障費の急増を抑制するのが狙いですね。
介護費の総額は2014年度約10兆円から、2025年度には約21兆円に増える見通しとなっています。
介護報酬の下げ幅は0~3%程度になりそうで、個々のサービスごとの下げ幅は2015年1月中にも決まる予定です。
抑制の対象は、利益率が一般企業よりも高い特別養護老人ホームや通所介護(デイサービス)有料老人ホームなどが中心となりそうです。
第3の柱「利用者個人の自己負担の引き上げ」
これも高齢化による社会保障費の急増を抑制するのが狙いですね。
上記の【得する人】で書いたように特養の相部屋料金(月15,000円)や、光熱費(プラス1,000円)について自己負担額の増額を予定しています。
まとめ
消費増税の延期が賃上げの減額につながらなければよいのですが…。
介護事業者、国、利用者みんなで負担を分け合って僕の給料を上げてください(笑)
続報
2015年1月7日の日経新聞朝刊に「介護報酬引き下げ、2.5~3%軸に調整 政府9年ぶり、最大の下げ幅」と、このニュースの続報が載っていました。
利益率が高い特別養護老人ホームへの報酬を大幅に下げる。
との事ですね。
「2.5~3%軸に調整」というのは全体で2.5~3%下げるということでしょうから、利益率が高い特別養護老人ホームや通所介護はそれ以上に介護報酬が下げられそうです。
この記事のコメント