ニュースで大きく取り上げられている『アベノミクス新3本の矢』。
新たな3本の矢は(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障――として
(1)「GDP600兆円」
(2)「出生率1.8%」
(3)「介護離職ゼロ」
と、3つの政策目標を示しました。
安倍首相は「長年手つかずだった日本社会の構造的課題である少子高齢化の問題に真正面から挑戦したい」と意気込みを示しており、どうやってこの目標を達成していくのか具体策が注目されています。
介護職員の僕としては、やっぱり「介護離職ゼロ」が気になりますね。
「介護離職ゼロ」の政策は介護士にとってメリットがあるのか。
簡単に言うと
『僕の給料は上がるのか』
ってことです。
そう考えると、この大きなニュースが急に身近に感じられるから不思議ですね。
介護職員の待遇にも関係してくるかもしれない「介護離職ゼロ」について考えてみたいと思います。
「介護離職ゼロ」とはどんな政策なのか
結論から言うと、「介護離職ゼロ」とは
家族らの介護を理由に退職せざるを得ない「介護離職」をゼロにする
ということです。
「介護離職」は年間10万人に上り、その年代も40~50代の働き盛りが少なくないため、国の経済にとって大きな打撃となっています。
首相「介護離職ゼロ目指す」 施設整備や人材育成を推進 /2015年9月25日日経新聞朝刊
勘違いしやすいのですが「介護職員の離職をゼロ」にする政策ではありませんのでお間違えないように。
「介護職員の離職をゼロ」だったらねー、待遇改善するしかないと思うんだけど。そういうことではありません。
「介護離職ゼロ」の具体策は
現役世代が家族の介護を心配することなく働くことが出来る社会は確かに理想で、それが実現できれば日本経済にとっても大きなプラスとなるでしょう。
日本経済が良くなり税収が上がれば、さらに社会保障を充実することが出来て好循環が生まれます。
重要なのはそれをどう実現していくかというところですよね。
具体策は、「1億総活躍社会」の実現に向けた緊急対策として11月末にまとめられる予定となっています。
2015年10月31日現在、以下の3つの施策が案として明らかになっています。
・(都市部での)特別養護老人ホームなど介護施設の整備
・介護休業給付の引き上げ
・介護休業の分割取得
それぞれの施策について、ひとつずつ考えてみます。
(都市部での)特別養護老人ホームなど介護施設の整備
今回の「介護離職ゼロ」の対策のなかで目玉となる一番大きな取り組みは、特別養護老人ホームなど介護施設の整備です。
特に都市部では慢性的に特別養護老人ホームなどの介護施設が不足しているので、その施設を増やそうということですね。
東京圏では2025年に介護施設が約13万人分不足するといわれており、都市部での介護施設の不足は深刻です。
それを地方都市への移住政策でなんとかしようという案もありますが、効果的とはいえません。
【参考】『「待機老人」大都市で増加』は解決できるのか
【参考】「介護施設13万人分不足 41地域へ移住提言」地方都市移住政策の問題点は何か
ですので、やはり都市部に施設を増やすしかない。
ただし、当然ながら施設を建てるには土地が必要ですよね。
都会の土地は高く、施設が増えない原因となっていました。
そこで、政府は介護施設を建てるために貸し出す国有地の賃料を下げる検討をしています。
政府は、首都圏で不足する特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設を増やすため、国有地を民間相場の4分の1程度の格安で事業者に貸し出す方針を固めた。
特養増設へ国有地貸し出し…介護離職ゼロ対策で/YOMIURI ONLINE
この国有地の貸し出しについては、財務省が出しているpdfファイルに詳しく書かれているので、詳しく知りたい方は下記のリンクからご覧ください。
とにかく介護施設を増やそうということです。
でも、そこで働く介護職員については何も言及がないんですよねー。
ただでさえ介護職員は人手不足が常態化していますので、その対策をせずに箱だけ作っても「介護離職ゼロ」にはならないと思うのですが。
介護士の人手不足を解消するには、介護報酬を上げて介護士の待遇を向上させるしかないと思います。
ですが、少子高齢化で社会保障費を削減しなきゃいけない中で、介護士の給料を上げるのは難しいでしょうね。
介護休業給付の引き上げ
2つ目は介護休業給付の引き上げです。
家族を介護するための休業をした場合、ある一定の条件を満たせば給付金を受け取ることが出来ます。
介護休業給付について/ハローワークインターネットサービス
その介護休業給付金の金額を引き上げようという施策ですね。
厚生労働省は10月22日、介護休業を取る人への給付金を引き上げる検討に入った。
現在の水準は賃金の40%。
介護休業給付引き上げ検討/2015年10月23日 日経新聞朝刊
給付金が増えれば、収入の減少を気にせずに介護休業を取りやすくなる効果が期待できるため、仕事と家庭の両立につながります。
一定期間の休職で済むなら職場復帰もしやすくなるかもしれませんね。
介護休業の分割取得
3つ目は介護休業の分割取得です。
介護休業の分割取得は、「介護離職ゼロ」が打ち出される前から検討されていました。
介護を必要とする家族1人当たり原則1回しか取得できなかった介護休業を、分割で取得できるように法改正を検討しています。
「介護離職ゼロ」で介護職員の給料は上がるのか
「都市部での特別養護老人ホームなど介護施設の整備」の所で書いたように、この施策で介護職員の給料が上がるかどうかは微妙なところです。
現段階では介護職員の待遇に関する話題は出てきていないので、今のところ介護職員の給料は「上がらない」可能性が高いですね。
ただし、政府の介護(施設)に対する意識は高まっていることは確かなので、「介護施設を充実させるだけでなく、介護職員の待遇を改善しなければ介護離職ゼロは実現できない」という話に発展する可能性は十分ありそうです。
アベノミクス第一弾は経済政策だけでしたから、そこから社会保障にも目を向けるようになったことは、介護業界にとって明るい話題だと言ってよいのではないでしょうか。
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