介護事業のお客さんである高齢者の人数が増えているにもかかわらず、介護業者の倒産件数が増えていると新聞記事になっていました。
介護業者の破綻が最多ペース 上期5割増、人件費など経営圧迫/2015年8月14日 日経新聞朝刊
なぜ介護業者の経営破たんが増えているのか、新聞記事を読みながら考えてみました。
年々増加している介護事業の倒産
新聞記事によると、
介護事業者の経営破綻が急増している。
東京商工リサーチによると、今年1~6月の倒産件数は前年同期比約5割増で、年間では過去最多を更新する勢いだ。
高齢化で介護需要は高まっているが、人手不足に伴う人件費上昇と建築費高騰が経営を圧迫している。
4月から介護報酬が2.27%引き下げられた影響でさらに増える可能性もある。
とのこと。
新聞記事と一緒に載っていたグラフでは、日本の景気が回復することで全産業の倒産件数が減っているのに対して介護事業では逆に増加していることがよくわかります。
最近も介護の大手企業であるニチイ学館や、異業種から介護事業に参入しているワタミも赤字になってしまったことがニュースになっていました。
・ニチイ学館、4~6月7年ぶり最終赤字 介護人材不足響く/2015年8月13日 日経新聞朝刊
・ワタミ最終赤字15億円に拡大 4~6月、外食・介護が苦戦/2015年8月12日 日経新聞朝刊
介護事業の経営が苦しい2つの理由
介護事業の経営が苦しい理由は、大きく2つです。
・2015年度の介護報酬2.27%引き下げ
・人件費の高騰
介護事業の収入と支出の両面から経営を圧迫する状態が出来てしまっているんですね。
理由1「2015年度の介護報酬2.27%引き下げ」
介護事業の収入源である介護報酬は3年ごとに見直しがされており、2015年度は2.27%引き下げられました。
この2.27%という数字は、介護報酬全体での割合なので、利益率が大きいとされているデイサービスなどはもっと高い割合で介護報酬が減額されています。
収入が減らされれば経営が苦しくなるのも当然ですね。
介護事業の場合、公的サービスなので企業努力で収入を増やす方法がかなり限られているのもつらいところです。
介護保険のサービスと一般のサービスを組み合わせられる混合介護の規制緩和が検討されていますが、まだ実現には至っていません。
理由2「人件費の高騰」
景気回復によって人を雇いたい企業が増えて有効求人倍率が上がり、人件費が高騰しています。
常々人手不足が叫ばれる介護事業ですが、介護以外の産業でも人手不足が起こっているってことですね。
(左側が年間の有効求人倍率の推移/平成14~26年)
景気回復で収益が上がっている企業は、たくさんお金を払ってでも人を雇うことが出来るし、人を増やすことでさらに収益を上げられることができます。
しかし、介護事業は人件費が支出の大半を占めているので、そう簡単には人件費を上げられない業態なんですね。
なので給料が上がっている企業が増えつつある中で、介護職員の給料はあまり増えておらず、介護職員の人手不足がさらに進行しやすい状況です。
それに加えて、介護職員が確保できないことで、ご利用者さんを十分に受け入れることが出来ず、収入が減ってしまうという悪循環も生まれています。
まとめ
単純に人件費が高騰して支出が増えていることに加えて、職員不足による稼働率低下で収入まで低下する状況になってしまうと急激に経営が苦しくなってしまいますね。
また、介護事業に参入する事業者が一気に増えたため飽和状態となっているというのもあります。
高齢者が増え続けている現状では、景気が良いからといって介護事業の収入はたいして変わりません。
逆に、景気が良いと産業全体の人件費が上がってしまうので、景気の良さと介護事業の収益性は逆の相関関係が成り立ちそうですね。
介護事業者にとっては、不景気な方がうれしいというちょっとねじれたお話でした。
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