ご利用者さんの尿失禁、便失禁を少しでも減らしたい。
というのは介護士なら誰しも考えることだと思います。
尿失禁、便失禁を減らすためのヒントを得られればと、『「日中おむつゼロ」の排泄ケア』という本を読みました。
この本によると「日中おむつゼロ」にするには、便失禁をなくしてトイレに座って排便をすればいい。
尿失禁だけなら、布パンツに尿取りパッドで対応できる。
とのことで、トイレ排便を実現させる方法を中心に書かれている本でした。
新しい知識を得ることは無かったのですが、基本的なことをしっかりとやっていくのは大切だと再確認できましたね。
トイレ排便を増やすために介護士ができることをまとめてみます。
まずは読んだ本の紹介から。
「日中おむつゼロ」の排泄ケア
1章 おむつは本当にはずせるの?おむつはずしの必要性、実現可能性
2章 実際の取り組みの過程
3章 必ずぶつかる「無理」「大変」の壁の乗り越え方/職員の戸惑いとご家族の不安
【内容紹介】
竹内孝仁氏が提唱する「おむつゼロ」は、100以上の特養が達成している一方、「絶対に無理」「適さない利用者もいる」など介護職の戸惑いも大きく、挫折する施設も少なくない。そこで、多くの介護施設を指導してきた著者が、挫折や壁を乗り越え「おむつゼロ」を成功させるポイントを伝授する。
この本を読んでいる途中で気付いたのですが、介護業界では有名な竹内理論の書籍版といったところでした。
竹内理論とは
この本から竹内理論をざっくり紹介すると、
2.食事/1日1500kcal
3.排便/下剤をやめて自然排便
4.運動/とにかく歩く(杖でも歩行器でも)
を実施して、その相互作用でおむつをしない状態にするといったものです。
僕の個人的な感想ですが、
これらを行うことによって起こりうるリスクについての記述が弱く信頼性に欠ける印象がありました。
終始、懐疑的な気持ちで読んでしまったのが正直な感想です。
ネットで竹内理論を検索しても賛否両論あり、その中でも否定的な意見が目につきました。
・言われている事は、一般的な注意点としてのチェックポイントだと思いますが、単調な理論として当てはめちゃう事はむしろ危険だと思います。
・認知症の症状は個別なので、画一的にケアしてしまうというのはむしろ逆効果を招く要因にもなり得ます。すべての能力低下を水分起因説にしてしまうのはどうかなと思う。
引用 竹内理論についてご意見ください:みんなの介護コミュニティ
正直なところ取り組み始めてから業務の負担が増し、『こんな介護のやり方正しいのか(例えばいきなり入居者全員の下剤をやめさせる・要介護4、5の方を2~3人介助で歩行器にもたれかかり足を引きずった状態で無理がら歩かせるなど)』と疑問に思うことが多々あります。
引用 Yahoo!知恵袋
竹内理論についてはこれ以上言及しませんが、介護職員だったらまだしも、ご家庭で介護をしている人が鵜呑みにしてしまうのは怖いと感じました。
便秘を解消してトイレ排便を増やすために介護士ができること
日常的な生理行動である排泄は、何かしたからといって劇的に状況が改善することはあまりありません。
ですので、細かいことでも継続して積み重ねていくことが大切ですね。
この本には、トイレ排便を増やすために介護士がやったほうがいいと考えられることがいくつか書いてありましたので、自分の経験を交えてまとめてみます。
トイレ排便を増やすために介護士ができることは以下の通りです。
- 適切な水分量の摂取
- 適切な食事量の摂取
- 食物繊維やオリゴ糖の摂取
- 下剤の調整
- 適度な運動
- タイミングよくトイレに座る
- トイレでの排便しやすい姿勢
適切な水分量の摂取と介助のコツ
水分の取りすぎは腎臓などの臓器に負担がかかりますので、無理は禁物です。
が、脱水状態になりやすい高齢者にとって、水分の摂取は快便にとってプラスでしょう。
僕が勤務している特養では、1日1000㏄を下回ることが多いご利用者さんには細かく個別の対応をしています。
もちろん水分制限のある方や看取り期に入っている方は例外ですよ。
適切な水分量については、介護士だけで判断できるものではありませんので、医師や看護師と相談して目安を決定しましょう。
もちろん日頃の摂取状況の様子などは介護士が一番観察しているはずですので、情報提供を忘れずに。
でも、たくさん水分を飲んでもらうのが難しいご利用者さんも多いですよね。
水分摂取量をアップさせるコツとして考えられるのは、
・提供するタイミングを考える(朝1番は飲んでもらいやすいご利用者さんが多いですね)
・こまめに提供する
・飲み物の温度を調節する(熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。またはぬるく。好みに合わせて)
・水分が進みやすいせんべい、カステラなどを一緒に提供する
・飲み物の代わりにゼリーやアイスを提供する
・ストローで介助してみる(コップよりもストローのほうが飲みがいい方もいます)
といったところでしょうか。
適切な食事量の摂取
食べるものを食べなければ、出るものも出ません。
出来る限りしっかりと食事を食べてもらいましょう。
逆に食が細い人は、そんなにたくさん排便がなくても大丈夫ともいえます。
まあ、まったく固形物を食べてなくても排便はありますけどね。
食物繊維やオリゴ糖の摂取
便の形成を補助する目的で食物繊維のサプリメントを使用することや、腸内環境を整えて快便につながるオリゴ糖を使用することも効果的です。
僕が勤務している特養では、ご利用者さんに合わせて両方使用しています。
両方とも摂取しすぎるとおなかが緩くなることがありますので、観察と調節が必要ですね。
下剤の調整
便の性状が緩く泥状便や水様便になっている場合は下剤の効きすぎが考えられます。
下剤が効きすぎているとトイレでの排便が難しく、便失禁してしまいます。
医師や看護師と相談して下剤の調整が必要かもしれません。
水分量と同様に普段の便を見ている介護士からの情報とアセスメントが大切で、それを元に相談を進めましょう。
どんな便か、それがどのくらい続いているのか、直近の食事量や水分量、体調の変化は感じられるかなどが判断材料になります。
介護士としては、どんな下剤をどの頻度で飲んでいるのかくらいは知っておきたいですね。
適度な運動
適度な運動をすることで腸の動きを活発にすることができます。
短い距離からでも歩行してみる、それが難しい方は食事の時に車イスから普通のイスに移る、など生活の中で出来ることを増やせるといいですね。
タイミングよくトイレに座る
トイレに座ることで、排便反射が起こり排便につながります。
まずは、トイレに座ってみることが大切ですね。
トイレに座って排便が出るタイミングは人それぞれですが、朝食後が多いですかね。
胃に食事や水分が入った刺激で腸が動くからです。
このタイミングも介護士の腕の見せ所でしょう。
全然タイミングがつかめない方もいらっしゃいますが、車イスでの自走が増えたとか表情が落ち着かないなどのわずかな変化をつかめるようにしたいですね。
トイレでの排便しやすい姿勢
足をしっかりと床に着けて、やや前かがみになるのが排便時の良い姿勢です。
引用 排泄ケアナビ
食事の席では踏み台を使っている方は多いと思いますが、トイレの時はどうでしょうか。
座椅子よりも便座のほうが低いことが多いですが、それでも小柄な方にとっては足がしっかりと着いていないことがあります。
そのような場合は、トイレでも踏み台を使用しましょう。
前かがみになるのが難しい方は、クッションを抱っこしてもらったり背中にクッションを入れて前傾姿勢を作ると良いですね。
排泄時の効果的な声掛け
ただ便座に座るだけでも座らないよりは全然良いのですが、せっかくなので排泄を促す声掛けをしましょう。
認知症の方は、トイレに座ったものの、どうしたらよいかわからないってこともありますからね。
「トイレに座ってますよ」「おトイレ(おしっこ、うんち)してくださいね」
腹圧をかけられる人には、
「おなかに力を入れて下さい」
なども有効な時があります。
その際に、おなかを腸の流れに沿って軽くマッサージしてあげるのもいいですね。
まとめ
もうすでに全部やってるよ!って介護士さんも多いかもしれませんが、みなさんもできることから取り入れてみてはいかがでしょうか。
特養の入居基準が要介護3以上になり重度の介護が必要なご利用者さんが増加している状況で、業務の負担を減らすためにもトイレでの排便を促すことは大切だと思います。
ただし、ご本人の状態に合った穏やかな生活を送れるように支援することとのバランスを取る必要がありますよね。
無理強いしてご利用者さんへの負担が増えてしまうようでは本末転倒です。
そのバランス感覚にも注意して排泄ケアを考えていきたいですね。
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