自分が働く特養では、ご利用者さんの重度化が進んでいます。それに伴って、嚥下機能などが低下して誤嚥性肺炎を起こすリスクの高い人が増えてきました。
高齢者の死亡原因の上位である誤嚥性肺炎。日本人の死亡原因は悪性新生物(ガン)、心疾患に続いて肺炎が第3位となっています。
「介護する人のための誤嚥性肺炎 こうすれば防げる! 助かる!」という本を読んで、誤嚥性肺炎について再確認してみました。
誤嚥性肺炎の原因と予防方法について、基本をしっかりと学びたい人におすすめの本です。
誤嚥性肺炎とは
本来気管に入ってはいけない食べ物などが気管および肺に入ってしまう「誤嚥」によって生じた肺炎。
老化や脳血管障害の後遺症などによって、飲み込む機能(嚥下機能)や咳をする力が弱くなると、口腔内の細菌、食べかす、逆流した胃液などが誤って気管に入りやすくなります。気管に食べ物や飲み物、唾液、その他の異物などが入り込むと、通常はむせます。これは異物を外に排出しようとするはたらき(反射)ですが、うまくむせることができないと異物は肺に入り込んでしまい、肺に入ると排出することはできません。その結果、発症するのが誤嚥性肺炎です。
介護する人のための誤嚥性肺炎 こうすれば防げる! 助かる!
この本は、各ページごとにイラストがあり、とってもわかりやすかったです。
介護者やご家族が嚥下障害を理解し、誤嚥性肺炎を防ぐための関わりを具体的にわかりやすく説明してある良書でした。
目次
part1 誤嚥性肺炎はなぜ起こる
part2 誤嚥性肺炎を防ぐ介護とは
part3 口腔ケアで誤嚥性肺炎を防ぐ
part4 嚥下機能を高めて誤嚥性肺炎を防ぐ体操
part5 誤嚥性肺炎の治療
巻末特集 誤嚥性肺炎のケアに役立つ情報集
part1で嚥下のメカニズムとその評価法、誤嚥が起こる原因などの誤嚥性肺炎の基本理解を深めます。
そして、それ以降のpartで予防方法について学ぶことが出来ます。
また、巻頭に誤嚥性肺炎を防ぐ10のポイントというのが載っており、わかりやすかったので今回はこれをご紹介します。
誤嚥性肺炎を防ぐ10のポイント
高齢者に多く発症する誤嚥性肺炎は、介護者が関わる日常生活の送り方しだいで予防できる病気です。
本書に載っていた10のポイントを参考にして予防に努めましょう。
1.口から食べる
2.座位になる
3.嚥下機能に合わせた食事
4.ていねいな口腔ケア
5.レクリエーションでよく笑い、よく話す
6.水分をよくとる
7.よく噛む
8.ゆっくり食べる
9.正しい呼吸をする(深呼吸・鼻呼吸)
10.よく歩く
1.口から食べる
当たり前のことですが、とても大事なことです。
口から食べなければ誤嚥はしない、というわけではありません。胃液の逆流や唾液でも誤嚥は起こります。
身体機能というのは使わないとすぐに衰えてしまいます。口から食べることは嚥下機能の維持や改善につながり、誤嚥性肺炎の予防になります。
ただし無理は厳禁です。無理をしてさらに誤嚥を起こしてしまっては元も子もありません。判断が難しいときは、医師や看護師などに相談しましょう。
2.座位になる
座位の姿勢は食事に最も適した姿勢です。
寝た姿勢では、食事がのどに詰まりやすく噛む力も出ないので誤嚥の大きな原因になります。
また、ベッドや布団から離床してテーブル(食卓)につくことで食事をする環境が整います。これから食事をとるという気持ちが生まれて、嚥下にも好影響があります。
3.嚥下機能に合わせた食事
若くて健康な人にとっても、硬くて噛みにくいものやパサパサしたものは食べにくいですよね。
高齢者や嚥下機能に問題がある人にとってはなおさらです。
嚥下機能に合わせた食材の選択や調理法の工夫によって誤嚥を防ぐ必要があります。
4.ていねいな口腔ケア
口の中には雑菌が常に存在しており、食物残渣などを栄養にして増殖します。
その雑菌に含まれている病原菌は誤嚥性肺炎の大きな原因となります。
口腔ケアによって食物残渣を取り除くと共に、唾液の分泌を促進して自浄作用を促す必要があります。
たとえ胃瘻などによって経口摂取していない人でも、口腔ケアを行って口腔内を清潔に保つことが重要ですね。
5.レクリエーションでよく笑い、よく話す
レクリエーションで体を動かせば肺活量がアップします。さらに、仲間の面白い動きや言葉に思わず笑いが出ます。
大いに笑い、おしゃべりをすることは、嚥下に欠かせない呼吸を強くして、口の機能を高める働きがあります.
自然な楽しみの中で身体機能をよくしていけるのは理想的ですよね。
6.水分をよくとる
高齢者は喉の渇きを感じる力が弱まり、脱水状態になってしまいがちです。
脱水は身体全体の機能を低下させます。口やのどの働きの低下に加えて、十分な唾液の分泌ができず誤嚥しやすくなってしまいますのでこまめに水分を補給したいですね。
7.よく噛む
食べ物は、よく噛んで細かくし、唾液でなめらかにしてのどの通りをよくすることで飲み込めます。
あわてて食べてむせることのないようによく噛んで食べるようにしましょう。
8.ゆっくり食べる
先ほどの「よく噛む」とつながってきますが、ゆっくり食べることも大切です。
ゆっくり食べることで口の働きが最大限に発揮されて誤嚥予防になりますね。
9.正しい呼吸をする(深呼吸・鼻呼吸)
どちらものどを使って行っている呼吸と嚥下には、密接な関係があります。呼吸機能がきちんと働いていないと正常な嚥下はできません。
また、鼻で呼吸をすることは、口腔内の乾燥を防ぐだけでなく、舌や咽頭の働きを強化してくれます。
10.よく歩く
人間の身体機能は、動かさないとますます動かなくなってしまいます。
歩くことは運動機能を向上させて体力を充実させます。さらに、嚥下に大切な呼吸機能も強化されるでしょう。
運動と嚥下は関係ないようで、実は密接なつながりがあるんですね。
結論
生き生きした暮らしをすることが誤嚥性肺炎の最大の予防であり、治療である
ということですね。
どんなことでもよいから、その人に合ったアクティブな生活を送ってもらうことが誤嚥性肺炎の予防につながるということです。
まあ、これは誤嚥性肺炎に限らずどんな病気にもいえますよね。
よく動き、よく話をするような活動的な生活を促すことが大切ですね。
ちょっとした気遣いで誤嚥を防ぐ
最後に、この本を読んで自分の業務の中でひとつ改善しようと思ったことがありましたので書いておきます。
調理の工夫によって誤嚥を防ぐページの中で、誤嚥しにくい食事の温度というのがありました。
嚥下反射は、冷たい温度や60度以上の熱い温度刺激によく反応します。熱い料理は熱い時に、冷たい料理は冷たい時に食べるのが美味しいだけでなく、誤嚥予防にも効果がある。
ということです。
施設での介護では、食事の時間にご利用者さんがまだ入眠中だったり、職員の人員不足だったりで食事が用意できてからすぐに食べてもらえないことが時々あります。
そんな時は、食事を取り置きしておくのですが、いざ食べられる状況になった時に忙しさやめんどくささもあってそのまま提供してしまうことがありました。
これからは、誤嚥予防やQOL向上のためにも、あったかいほうがおいしいものはきちんと温めてから提供しようと思います。
自分自身も熱い料理はあつあつで食べたい人なので、今後は気を付けていきたいです。
やっぱり自分がしてほしいように、他人にもしてあげるってのが考え方として自然だし素直に理解しやすいですからね。
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