腰痛を軽減したい。
という気持ちから『ノーリフト 持ち上げない介護抱え上げない看護』という本を読みました。
本の内容は、持ち上げない・抱え上げない介護をするための抽象的な理念・考え方の話が多く、すぐに現場で役立たせることが難しいと感じましたが、
「福祉用具を使わない職員は、知識がない・勉強不足だとみなされる」
という文中の言葉には、ハッとさせられました。
さっそく日々の業務内で出来ることから取り組んでいこうと思います。
リフトなどを活用して腰痛を予防するための考え方を学びたい人におすすめの本ですね。
まずは読んだ本の紹介から。
ノーリフト 持ち上げない介護抱え上げない看護
1.オーストラリアのノーリフト
2.ノーリフトプログラムとは
3.日本の看護・介護現場から
4.日本におけるノーリフト導入方法
5.ノーリフトケアを在宅医療・介護に生かす
6.日本ノーリフト協会の取り組み
【内容紹介】
ノーリフトプログラムは、リフトなどの機器導入だけでなく、 現場の腰痛予防対策の知識やケアの方法、 文化を変えていく。 腰痛を予防し、職員の健康を守ることで人材確保と経営の安定につながる! 拘縮、褥瘡予防にも役立つことを証明! 付録「実技動画DVD」でさらに深く学べる。
いきなり「オーストラリア」ときて驚いたのですが、著者の保田淳子さんは留学先のオーストラリアでノーリフトプログラムに出合い、感銘を受けて日本で普及活動を行っています。
ノーリフトプログラムとは
ノーリフトプログラムとは、単に福祉用具を導入するためのプログラムではなく、「現場の腰痛予防対策の知識やケアの方法、文化を変えていくためのツール」です。
ただ単純に福祉用具を使えばいいってわけではないんですね。
ノーリフトプログラムの目的
人力による持ち上げや移乗介助に、適切かつ近代的なリフトやその他の移乗危機を使用すること、ご利用者さんの自立運動能力を促進し、自ら移乗や動作が行えるようにサポートできる看護・介護職の人たちを育てることが、ノーリフトプログラムの目的となっています。
ご利用者さんの状態は常に変化しているわけですから、良い介護をするには観察をしてアセスメントをすることが大切です。
そして、その場で適切な判断をすること。
介護の仕事は同じ作業を繰り返すルーティン業務になりがちです。
いつもやっているこの介助方法で最善なのか、常に考えるクセをつけることが大切ですね。
身体に負担の少ない介護のコツ
ノーリフトケアの1番のポイントは、自分の最小限のエネルギーで相手の最大限の力、動きを支援することです。
最小限のエネルギーとは声です。
声=コミュニケーションをたくさん使って相手の動きを引き出し、どうしてもサポートが必要なところだけ介助することが身体に負担の少ない介護のコツですね。
声掛けだけで介助に関わる1日の仕事が全部終わったら本当に最高です。
腰痛には悩まないでしょうね。
出来る限り声掛けで
僕が未経験で介護施設に転職してまだ間もないころのエピソードで、印象に残っていることがあります。
介護について右も左もわからなかった僕ですが、現場で先輩職員に一通り介助方法を教えていただき、自分が介助をして先輩職員が確認する。といった段階での出来事です。
トイレで座っているご利用者さんを車イスに移乗する場面。
手を伸ばして手すりにつかまろうとするご利用者さんの手を、僕は何気なく手首を持ってサポートしました。
その後で、
「そんなに簡単にさわっちゃダメ。声掛けだけでいけるから」
と言われたのを今でも覚えています。
まだ新人でゆっくりやればいいからと言われていたので、特に急いでいたわけでもなかったんですけどね。
ちょっとしたことで「ご利用者さん自身で出来ることを奪ってしまった」ということが今ならわかります。
それ以来、声掛けだけで本人の力をできる限り引き出せるように意識しています。
もうひと呼吸待つ余裕で介護が変わる!
名言出ましたね(笑)
声掛けこそが、最も簡単で最も難しい介護技術だと僕は思います。
ボディメカニクスを使った介助
声掛けだけではどうにもならない時、ボディメカニクスを使った介助をしましょう。
ただし、ノーリフトプログラムでは、ボディメカニクス単独では腰痛予防対策には有効ではなく、福祉用具などを活用した際に使用するべき姿勢である、と言われています。
支持基底面積を広くする
介護者の足幅を前後左右に広くとる事で立位が安定する。
重心の位置を低くする
介護者が膝を曲げ、腰を落とす事で重心が低くなり、姿勢が安定する。
重心の移動をスムーズにする
対象を持ち上げるのではなく、水平に滑らせるように移動する事で負担が軽減する。 また、垂直に向かい合ったり、移動する方向に足先を向けるとよい。
重心を近づける
本人に接近する事で容易に介助できる。
介助者は、介助動作中の重心線が支持基底面を通る姿勢を維持しながら利用者に重心線を近づける。
てこの原理を使う
肘や膝を支点にし、てこの原理を使う。
身体を小さくまとめる
仰臥位姿勢の身体各部位の体重に対する割合は、およそ頭部7%、胸・腹部33%、臀部44%、下肢部16%である。
対象の両手、両足を組む事で摩擦が少なくなり、移動しやすくなる。
大きな筋群を使う
大きな筋群(大筋群)とは、大胸筋、後背筋、大腿四頭筋、腹直筋、大臀筋、脊柱起立筋のことをいう。
腕や足、指先だけの力で動作するより、大きな筋群を使用した方が力が大きく効率的である。
引用 ボディメカニクス/wikipedia
なかなか言葉だけで理解するのは難しいですよね。
ご利用者さんの身体状況は千差万別ですので、日々のケアの中でコツをつかんでいくしかないですね。
福祉用具の活用
移乗用リフトは、どうしても時間がかかってしまうためなかなか普及していかないと僕は思います。
でも、時間がかかるといっただけでケアの選択肢から外してしまうのは間違っていたとこの本を読んで気が付きました。
本にも「福祉用具が活用されないのは、リフトを活用してケアが変わった成功体験をしていないことが原因」と書かれていましたが、その通りだと思います。
これからは適切なアセスメントを行って、福祉用具の使用も選択肢に入れていきたいですね。
先日、別のユニットのお手伝いでスライディングボードを使用する機会があったのですが、
思いのほか楽で、自分がかかわっているご利用者さんにも試してみることにしました。
まとめ
移乗介助での過重負担と排泄介助などでの中腰での作業によって腰痛になります。
介護する側もされる側も安全・安楽に負担が最小限になるように、視野を広く持って日々のケアを見直してみようと思います。
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