介護士の給料が安い6つの理由と給料を上げる方法

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介護の仕事は、給料が安い。

そんな話題が、たびたびニュースで報道されています。
介護職員の待遇を改善する施策もいくつか実施されてはいますが、まだ問題が解決するほどの効果は出ていません。

参考 介護職員の処遇改善:TOP・制度概要

では、なぜ介護の仕事は給料が安いのでしょうか?
その理由がわかれば、良い解決策が見つかるかもしれませんよね。

介護士の給料を上げろ!
と言う声は現場の介護士を中心にいろんなところで耳にしますが、「給料を上げろ」というだけで具体策がなかったり、的外れだったりすることが多いと感じています。

なぜ介護の仕事は給料が安いのかを冷静に考えたうえで、給料を上げる方法を考えた方が良いでしょう。

なぜ介護士の給料は安いのか、6つの理由

介護士の給料が安い理由は以下のとおりです。

  1. サービスの単価が決まっている
  2. 介護保険の財源は保険料と税金
  3. 介護事業のビジネスモデル
  4. 介護は給料が安いというイメージ
  5. 誰でもできる仕事
  6. 離職率の高さ

これらの問題が関わりあっているのですが、実際は「サービス単価」「収入の財源」「ビジネスモデル」の3つの問題が大きいです。

①介護事業のサービス単価は国が決めている

介護事業者が介護保険適用対象となる介護サービスを提供した時にもらえるお金(介護報酬)は、厚生労働省によって金額が定められています。

例えば、電化製品の製造・販売だったら、新しい機能をつけるなどの付加価値をつけた分を値上げするなどの戦略を取ることができますが、単価が決まっているとそれが出来ません。
どんなに心温まるケアをしたところで得られる収入は同じです。
※ケアの質は集客に関わるので、良いケアを否定しているわけではありません。単純に得られる収入に限った話です。

そして、定員が決まっています。
つまり介護報酬が上がるか、事業規模を拡大しなければ、介護事業者の収入は増えていかないんですね。

介護サービスの単価が決まっていることが原因で介護事業者が大きな利益を上げることが難しいため、介護職員の給料が安いのです。

②介護事業者の収入である介護保険の財源は保険料と税金

では、なぜ介護報酬がなかなか上がらないのかというと、介護保険の財源は保険料と税金だからです。

介護保険制度の仕組み
現在の日本は少子高齢化で財源(税金)が不足しています。
そして、今後も少子高齢化が深刻化して税収が伸び悩み、社会保障費は増大する予測が立っているため、介護報酬の割合が大きく増える可能性は低いです。
日本の財政が健全化して社会保障にお金がたくさん回せるようになれば、介護職員の給料は上がるでしょう。

介護報酬が上がらなければ介護事業所の利益は増えず、介護職員の給料は上がりません。

③介護事業は定員が決まっているので収入に上限がある

「介護事業はサービスの単価が決まってる」ので、事業所を増やさなければ利益は増えません。
そういうビジネスモデルです。

介護職員で考えると、経験や勤続年数が長くても給与に反映しない(させられない)んです。
新人だろうが、ベテランだろうが一人のご利用者さんをケアして得られるお金は同じだし、経験を積んだからといって一人の介護職員がケアできるご利用者さんは増えないからです。

もちろんベテランにはベテランの役割はありますよ。
ただ、それを評価して給料としてお金を払える介護事業者は少ないのが現状です。

そして、介護業界は人手不足です。
その中で事業規模を拡大していくのはかなり難しいことと言えるでしょう。

介護事業のビジネスモデルを考えたうえで介護職員が給料を上げたいなら、すでに事業規模の大きい大手企業で働くか、積極的に事業規模を拡大しているところで働く必要があります。

せっかくなので、賃金構造基本統計調査から企業規模別にみた年収をデータで比較してみましょう。
「10~99人」「100~999人」「1000人以上」の項目に分かれています。

 10~99人100~999人1000人以上
介護支援専門員(ケアマネージャー)391.0382.6375.7
ホームヘルパー321.7336.1354.1
福祉施設介護員328.8343.6347.7

「ホームヘルパー」「福祉施設介護員」ともに事業規模が大きいほど平均年収が高い傾向になっていますね。

例外は「介護支援専門員(ケアマネージャー)」です。
規模が大きい法人ほど給料が安い。
数年前までは、大きい法人ほど給料が高かったのですが。
なんでだろ、謎です(笑)

以上、「介護事業はサービスの単価が決まっている」「介護事業者の収入である介護保険の財源は保険料と税金」「介護事業のビジネスモデル」といった3つの要因から介護職員の給料は安いと思います。

以下は、多少関係あるかなって項目です。

④介護は給料が安いというイメージがある

介護の仕事は、一般的に給料が安いというイメージが強くあると思います。
まあ、実際にデータが示すように安いのですが…。

そのイメージから、介護職員として働く人の中にも「介護は給料が安くてもしょうがない」とあきらめている人がいます。

戦いましょうよ。
「給料を上げてください」って言いましょうよ。
納得できる給料をもらえるところに転職しましょうよ。

僕は、折を見て上司に「給料を上げてください」と言っています。
あ、あと「もっと有給を取りたいです」も(笑)

介護の仕事をする人が、みんなで積極的に行動すれば状況は変わっていくはずです。

ただし、
給料アップを望むなら、当然それなりの能力は求められます。

自信をもって「給料を上げてください」って言えるように日々のお勉強は必要ですね。

⑤介護は誰でもできる仕事だと思われている

介護の求人広告を見ると「無資格、未経験、可」の募集がたくさんあります。
つまり介護は誰でもできる仕事と言えるかもしれません。

実際に、僕が働いている特養でも未経験の人を採用することがあります。
未経験の人でも、社内の研修を3ヶ月行えばほとんどの人がある程度一人で仕事ができるようになります。

誰にでもできる仕事に、高いお金は払われないですよね。

介護の仕事で給料を上げたいなら、最低限の資格取得は必須です。

⑥離職率が高いから昇給している人が少ない

介護の仕事は離職率が高いことでも有名ですよね。
せっかくなので勤続年数のデータを見てみましょう。

129種類の職種の中で勤続年数の長い順に数えると

「介護支援専門員(ケアマネージャー)」が102番目
「ホームヘルパー」が115番目
「福祉施設介護員」が120番目

になっています。
介護の仕事は、長く続けている人が少ないってことですね。

勤続年数が長くても給与に反映しない(させられない)とすでに書いていますが、それでも多少は上がります。
勤続年数が短いということは、昇給している人も少ないということになりますね。

給料を上げるために介護職員ができること

介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取る

介護士が給料を上げるのにもっとも確実なのは、介護福祉士の資格を取ることです。

「実務者研修」と「実務経験3年間」の受験資格がありますが、試験の難易度はそれほど高くありません。

介護福祉士に資格手当をつけている職場は多いと思うので、月々の給料アップに直結します。
また、介護福祉士の有資格者の割合が、要件になっている加算もあるので、介護事業所からも必要な人材になります。

資格で、介護福祉士の次のステップを考えるなら介護支援専門員(ケアマネジャー)ですね。
利用者さんを直接介護する仕事から、相談や調整をする仕事ができるようになります。
だたし、介護士からケアマネや相談員などになると処遇改善加算の支給条件などによっては給料が下がってしまう可能性もあるので、要注意ですね。

役職者になる

介護施設であれば、ユニットリーダーやフロアリーダー、介護主任などの役職者になれれば、役職手当がつくことが多いです。
ただ、多くの人から手当と業務量が割に合わないという話を聞きます。これはうちの施設だけの話ではないでしょう。

現場を兼務しながらになるパターンが多いので負担もかなり増えますが、視野が広がります。
人材をマネジメントする能力が必要になってきますね。
まぁ、役職者にはなろうと思ってなれるものでもないですから、日々の仕事を頑張るのみです。

給与の高い職場に転職する。でも勤続年数は大事

良い条件の職場に転職できれば、給料を大きく変えられる可能性がありますね。
同じ地域でも給与にけっこう差があったりします。

長期的に見れば勤続年数が大事になってくると思うので、決断はお早めに、がオススメです。

ひとりケアマネとして独立する、起業する

介護業界で独立するには、ケアマネとして居宅介護支援事業所をオープンするのが一番手堅いでしょう。
稼げるかどうかは自分しだいですが、様々な面で自由度が高くなります。
居宅ケアマネは特定事業所加算を取らないとかなり厳しいので、そこまでどうやって持っていくかが大事だと思います。

【今後の予測】これから介護士の給料はこうなる

X(peing)で「介護職員の今後の給料と未来についての予想」について質問をもらいました。

質問者さん
質問者さん

介護職員の今後の給料と未来についての予想を教えてください(^^)
個人的にはもう給料は国からの支援等は頭打ちだと思っててピンキリではあると思いますが、380万~450万円が介護職員の年収だと思っています。
そして老人は増える一方なので、仕事的には絶対になくならないし倒産もしにくいと感じているので、ある意味安定している仕事だと思っています。

この質問に対して、私の回答は以下のとおりです。

日本全体の介護福祉が崩壊しないギリギリのラインを狙って少しずつ給料が上がっていく

丸顔ヒデ
丸顔ヒデ

わたしの考えも、おおむね質問者さんの意見のとおりだと思います。

国からの支援は引き続き継続すると思いますが、全産業の平均年収に近づいたり遠ざかったりしながらギリギリ介護サービスが崩壊しないラインを狙っていくんだろうなーって思います。
最低賃金がしばらくは上がっていく予想があるので、それに伴って全体の年収は上がると思います。なので、介護士の年収はいくらになりそうってよりも、処遇改善や介護報酬の改定で調整しながら緩やかに全産業の平均に合わせてあげていく感じだと思います。

丸顔ヒデ
丸顔ヒデ

介護の仕事は安定しているっていうのは、その通りですね。
2040年ごろまでは高齢者の人口は増え続けますので、介護士の需要も増え続けると思います。ただし、地域によってはすでに減少傾向にもなっています。
つい先日もニュースになってました。

介護サービスの運営基準の弾力化を検討 厚労省 地域の実情に合う効率的なモデルを構想

①既に介護ニーズが減少局面に入っている「中山間・人口減少地域」
②介護ニーズが2040年以降も拡大する「都市部」
③介護ニーズが当面拡大し、その後減少に転じる「一般市」
この3つに分けて対応を考えていくって感じみたいです。
住んでいる地域によっては、介護士だとしても仕事がないってことも起きてきそうです。都市部ならまず問題はないでしょう。

介護業界も2極化が進み、地方から倒産や合併が増えていく

丸顔ヒデ
丸顔ヒデ

それに合わせて、介護の職場も2極化も進みそうな気がします。時代に合わせて対応できるところと、人手不足で事業の継続が難しくなってしまうところ。
とにかく介護に限らず人手不足になっていくので、どの職場もしんどくなるんじゃないかなーと思います。
理想の介護というよりは、生きていくために必要最低限のことしかできなくなってしまう職場が増えていくのかもしれないですね。

【まとめ】時流を読んで自分の道を切り開こう

まとめると、以下のようになります。

「介護事業はサービスの単価が決まっている」から介護事業者の収入に限界がある。
「介護事業者の収入である介護保険の財源は保険料と税金」なので、サービスの単価が上がらないし、上がる見込みも少ない。
「介護事業のビジネスモデル」から、事業を拡大しないと収益を増やせない。
「介護は誰でもできる仕事」だから、高い給料が払われない。
「介護は給料が安いというイメージ」から、介護職員も安い給料であきらめている。
「離職率の高さ」から、昇給している介護職員が少ない。

現在の介護保険制度の下で仕事する限り、介護職員としてたくさんの給料をもらうことは難しいです。

介護保険制度がスタートしたのが2000年ですから、本格的に介護の仕事が体系化されてからの歴史はまだ浅いです。
介護の大手企業も事業統合が増えてきており、まさに業界再編の真っただ中と言っていいでしょう。

給料を上げるために介護職員自身ができることは、給料をたくさん支払う会社に転職することです。
で、それは規模の大きい企業であることが多いとデータは示しています。

そして、そのような会社に入るには、相応の能力が求められます。
介護福祉士などの資格取得はもちろんのこと、介護職員としての経験を積み、介護技術や知識、情報共有能力、リーダーシップなどを身に付けて、必要とされる人材にならなければいけません。

これから介護業界がどんどん活性化することで、介護業界全体の賃金が底上げされていけば良いなと思っています。

この記事を書いた人

●ユニット型特養14年目
●課長(特養、ショート、デイ、居宅、包括)
●元ユニットリーダー、施設ケアマネ
●元介護認定審査員、介護福祉士実習指導者、技能実習指導員
●介護福祉士、介護支援専門員

 »»プロフィール

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