
統一したケアを提供するには、ルールが必要です。
でも、何でもルールで解決しちゃうのは良くないなーと思います。
細かいルールを作りすぎて、自分で考えられなくなっちゃった介護士が増えていませんか?ルールは、使い方によって成長の機会を奪ってしまうこともあります。
介護士が、その場で自分で判断できるスキルを身に付けられるように考えながらルールを決めていくのがオススメです。
このルールは必要?
食事介助の順番が決まってるユニットの話(事例の紹介)

質問です!
ユニットケアをしているのに食事の順番を決める必要はあるのでしょうか?
最近、ユニットでの異動があったのですが、そのユニットには食事介助を必要とする入居者様が4人居ます。職員から食事介助に入る順番あるから守ってください。と指導がありました。
入居者様より人より早く食べたい、食べさせて欲しいというニーズは聞かれてません。4人に支援するにあたり職員は常に2人です。順番とか決める必要あるのでしょうか?
入居者様によってランク付けしてるみたいで腑に落ちませんでした。1番最初に食べさせる人は食事介助に時間がかかるという理由を言われました。それってこちらの主観であり入居者に寄り添った介護やユニットケアから外れてるかなと思うのですがどうでしょうか?
なかなか興味深い質問ですよね。
この質問に対して、こんな回答をさせてもらいました。

回答します!
確かに僕も
「食事介助に入る順番があるから守ってください」
とまで言われちゃうとちょっとやりにくいなと思います。
入居者さんのその日の調子や全体の流れで順番は決めたいので。
ただ、なるべく同時に食べ終わった方がその後の業務の流れがスムーズですよね。ご飯の後はトイレに行かれる方が多いので、食事介助の途中で排泄介助はできるだけ避けたいですから。
確かに寄り添った介護は大事だと思うのですが、入居者さん全員に100%寄り添うのは難しいので…と考えてしまう自分もこれで良いのかなーと悩んではいます。
難しいですね。
個々人のべストよりもユニット全体のベターを考えた結果、食事介助の順番は自然と決まってくるのではないでしょうか。
というのが今の僕の結論です。
ここで大事なのが、『入居者さんのその日の調子や全体の流れで順番は決めたい』って部分。
介護の仕事の多くは毎日同じことの繰り返しでルーティン化されやすいけど、入居者さんの体調や気分、対応する職員など様々な要因で毎回微妙に違います。
その毎回微妙に違う業務に上手に対応していくのが、介護士の大変さだし、面白さでもあると思うんですよね。
「食事の順番を決めておく」ってルールは、臨機応変な対応がやりにくくなる。さらにいえば、状況に合わせた判断をしなくてよくなります。
ルールを上手く使わないと、自分で考えられない介護士が作られていく。っていうのはちょっと言い過ぎでしょうか。
自分で判断できない介護士が増えてきた?

ルールが増えた理由のひとつは海外人材が増えたから
うちの施設では、海外人材が働くようになってから、ルールが増えてしまった気がしています。
貴重な戦力であることは間違いないんだけど、介護の考え方や根拠を細かいところまで教えるのがなかなか難しいのが実情です。
そうなってくると「こうなったら→こうしてね」ってルールを決めて、パターン化していくのもしょうがないのかもしれません。
人員不足なので独り立ちを早めたい状況もあいまって、ルールに頼った運営が当たり前になっています。
だから、決められた仕事は早いし上手にできるんだけど、応用が苦手な職員が多い。
「オレの背中を見て学べ」って指導はさすがに古臭いけれど、本質的な部分が欠けているような気がしてなりません。
まぁ、日本人も介護が好きでこの仕事やってます、って人の割合がかなり減ってきてませんか。
僕が大好きな「無資格だけどセンスでめっちゃいいケアをするおばちゃん介護士」は、絶滅危惧種になってしまいましたね。
むしろ判断させないようにしてるのかもしれない
教える側のセンスの問題でもあります。
本質的な部分を理解してもらうのって難しいですもんね。
ルールを決めちゃうのは、ある意味で簡単です。
リーダーはその通りにやらせれば良いし、メンバーもその通りにやれば良いんだから。
考えたくない、考えられない職員にとっては、優しいのかもしれません。
でも、その介護って作業的すぎないですか。
あんまり面白い仕事の仕方ではないんじゃないかなーと僕は思います。
感覚を使いたい。
ルールを作ると何が起きるのか?メリットとデメリット

ルールを作ると最低限のクオリティが上がる
ルールは、その集団で一番レベルが低い人に合わせて作られます。
そのため、最低限やらなきゃいけないことの質は上がりますが、能力が高い職員にとっては自由度が少なくなり働きやすさは低下します。
ルールを作ると施設全体(チーム)の責任になる
ルールを守って働いていれば、何かトラブルがあった時に個人が責任を問われることはありません。
ルールを作った人、ひいては施設全体の責任になります。
適切にルールを作れば職員個人を守ることができるし、逆にルールを守らない職員がいるとその職員の責任になってしまいます。
ルールを正しく作るだけでなく、ルールを守らせることもリーダーの役割になります。
ルールがあるとヒトは考えなくなる
「こうなったら→こうしてね」ってルールが増えてくると、自分で判断する場面が減ってきます。
そうなってくるとルールにない出来事が起こった時に困ってしまいます。
そんな時に困らないようにするためには、そのルールを作った根拠や考え方を理解してもらうことが大事です。
「転倒のリスクがあるAさんとBさんが同時に立ち上がった時は、Aさんから対応しましょう。」
とだけ教えるのではなく、○○の理由でAさんの方がより転倒のリスクが高いから…。といった感じです。
根拠をもって自分なりのルールをみんなが作れれば、全体でのルールは減らせるんですけどね。
そのスキルを身に付けるのではなく、ルールで解決するのが増えている気がします。
トロミのスプーンが3つに増えた話
ルールで課題を解決すると職員のスキルが上がらない話に関連して、スキルアップではなく物で解決した例をひとつ。
うちの施設では、トロミを弱トロミ(2.5㏄の計量スプーン1杯)、中トロミ(5㏄)、強トロミ(10㏄)の3段階を基本にしています。
委員会の中でケアの課題として「トロミの濃さが職員によってばらつきがある」と話があがりました。
話し合いの結果、5㏄のスプーンで量っていたんだけど2.5㏄と10㏄の計量スプーンも用意しようという結論に。
いやー、正直ガッカリしましたね。
5㏄のスプーンでちゃんと狙ったトロミがつけられるようにスキルアップすればいいんじゃないんですかね。
自分が参加していない委員会だったし、決定事項って感じで話があったのでそのままスルーしちゃいましたけど。
トロミのつき方は、水分の種類や温度でも変わってくるので、複数の種類の計量スプーンを用意するやり方は、根本的な解決になってないんじゃないかなーと思います。
スキルアップを目指そうよ。
大事なのは5㏄ピッタリにトロミ粉をいれるのではなく、その入居者さんにピッタリのトロミの濃さを作ること。
目的を見失ってはいけません。
ちなみに自分は、入居者さんによって4㏄とかルールにない量で対応してたりします。
あまり現場に出ていない自分がこれをみんなに教えるのは、さすが手間すぎるのでコッソリとやってます。
すいません。
(余談)ICT機器で介護士の感覚は退化するのか?

ルールと同様にICT機器も使い方しだいで介護士のスキルが低下しちゃうかもなと思います。
歩く音で誰だかわかるスゴい介護士
離床センサーがなかったときは、物音に敏感でしたよね。
車いすのタイヤがすれる音、靴底がキュッてなる音、ドアを開ける音、L字バーが動く音、などなど。
特に夜勤の待機中は、いろんな音に敏感で、どの入居者さんがどんな状況なのかがすぐ目に浮かびました。
離床センサーでの対応が増えた今、介護士の聴覚は低下してしまったかもしれません。
忍者の末裔ですか?物音を立てずに安否確認するスゴい介護士
眠りスキャンやaamsなどの見守り支援機器を導入して、夜間帯の安否確認を行っている施設が増えてきました。
こっそりと居室に忍び込んで呼吸や入眠状況を確認するスキルが低下する日も近いでしょう。
犬のような嗅覚?においでパッドに排泄があったかわかるスゴい介護士
Dfreeやヘルプパッドなどの排泄を検知する機器も増えています。
居室に入った瞬間のにおいで「あ、お通じ出たかも」と排泄ケアに入るスキルも低下してしまうかもしれません。
ルールもICT機器も使い方が大事
介護士として良い仕事をするには、感覚が大事だと思います。
センスと言い換えても良いでしょう。
ルールや機械に頼りきりでは、センスは良くなりません。
介護士として必要なセンスは何なのかを意識してルールやICT機器と向き合っていけたらイイですね。
【まとめ】ルールを作らないで解決できないかを考えよう
勘(感覚)は、介護士の最高のスキル
勘(感覚)は、介護士の最高のスキルだと、私は思います。
できるだけ勘でケアをしたいので、ルールは少ない方がありがたい。
必要最低限のルールの中で、ノビノビと仕事ができるような環境を作れたらなーと思っています。
ルールを増やすのではなく、スキルアップを目指そう
リーダーにお願いしたいのは、ルールを作るのではなく教育をする。
これが理想です。
パッドが減ったらなくなる前に補充しましょうと決めるのではなく、パッドが減ったらなくなる前に補充する職員に育てることが大事。なくなったら他の職員も困るだろうなと思って自ら補充することが大事。
そうなれば、口腔ケアのスポンジが減った時でも補充するようになると思います。
マジでムカつくパターンがあってさ、パッドが残り3枚以下になったら補充しましょうってルールを決めて、口腔ケアのスポンジが減ってた時にパッドと同じだから減ってたら補充しようよって指導したら、いやパッドは減ったら補充してますけど、口腔ケアのスポンジは言われてないのでやってません。とか言われたらマジでムカつくよね。
とりあえずはルールでどんどんやらせてもいいけど、どこかのタイミングで「教育していく」っていう次のステップに進んでいけたらより良いチームになっていくと思います。
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