

ちゃんと伝えたはずなのに…
なんで分かってくれないんだろう?
こんなモヤモヤを感じたことはありませんか?
介護現場でリーダーとして働く中で、「言ったよね…?」という一言がつい口をついて出てしまう場面。
それは、伝え方が悪かったのではなく、信頼関係が足りなかったことが原因かもしれません。
この記事では、伝え方の前に大切にしたい「信頼関係」について掘り下げます。
現場でよくある“伝わらない”場面

介護現場では、「伝えたはずなのに、なぜか実行されない」という場面がたびたび起こります。
たとえば――
- 共用のトイレのドアが何度注意しても開けっ放し
- 入居者さんの居室のドアを閉めるよう言っても守られない
- 起床時のヒゲそりが日によって、やったりやらなかったり
- 食事介助で「無理せず中止でOK」と伝えているのに、毎回全量を介助してしまう
いずれも、衛生面やプライバシーの意識、整容の重要性やケア方針の理解など、背景には複数の要因があります。
でも、根本には「言われたことをやろうと思えるかどうか」という、リーダーとの信頼関係の有無が関わっていると感じる場面が多くあります。
「言われたからやる」ではなく、「この人が言うならやろう」と思えるかどうか。
その違いが、伝わる・伝わらないを分けているのかもしれません。
伝えているのに響かないのは、なぜ?

リーダーとして伝えた内容が、なぜか相手に響いていない。
きちんと説明したつもりなのに、反応が薄かったり、行動に移してもらえなかったりする。
そんな場面に直面すると、「どう伝えればよかったのか」と考えがちです。
でも実際には、伝え方そのものが原因ではないケースも少なくありません。
同じ言葉でも、「誰から言われたか」で受け取り方はまったく変わってしまうのです。
信頼している人の言葉なら、素直に耳に入るし、行動にもつながりやすい。
逆に、信頼関係が不十分な相手からの言葉は、どこか他人事のように受け流されてしまうことがあります。
つまり、「伝わらない」の背景には、伝えたい相手との距離感や関係性の深さが、大きく影響しているんですよね。
信頼がないと、何を言っても響かない

心が動くのは、言葉の中身より「誰が言ったか」。
どれだけ丁寧に説明しても、どれだけ正しいことを言っても、相手が「この人の言うことなら聞いてみよう」と思えなければ、行動にはつながりません。
逆に、少しくらい言い方がきつくても、説明が完璧でなくても、信頼している相手の言葉なら素直に受け入れ、行動につながります。
実際、ある技能実習生は、特定のユニットリーダーに対して絶大な信頼を寄せていました。
指示が明確で、面倒見が良く、丁寧に相手と関わる人だったので、そのリーダーの言うことなら素直に受け入れるし、わからないことがあればまずそのリーダーに確認する。
その技能実習生にとっては、まるで“神様みたいな存在”のようになっていました。
一方で、きっちりしすぎて堅苦しいと感じるスタッフもいたかもしれませんが、信頼関係があることで、指示が行動に変わる力になっていたことは確かです。
信頼されているからこそ、言葉が届き、行動が変わる。
リーダーの「伝える力」は、言葉そのものではなく、関係性からスタートしています。
リーダーが自分の関わり方を見直す5つの視点

信頼されるリーダーになるために、カリスマ性や特別な話術が必要なわけではありません。
大切なのは、「この人なら大丈夫」と思ってもらえる日々の積み重ねです。
信頼を得る方法は1つではありません。
自分の性格や考え方に合ったやり方で、少しずつ信頼を築いていけばいいんです。
ここでは、私自身が「こういう人は信頼される」と感じてきた5つの視点をご紹介します。
①日々の態度・姿勢が、信頼を積み重ねる
- まじめに仕事をしている(雑用も手を抜かない、期限を守る)
- 体調管理ができていて、仕事を休まない
- 気分の浮き沈みが少なく、感情が安定している
- 精神的に余裕がある
- 矢面に立つ
こうした態度や安定感は、見ている人に安心感を与えます。
「この人はブレない」「任せても大丈夫」という信頼のベースは、こうした日常の積み重ねから生まれます。
②日常の関わり方が、信頼を育てる
- 誰にでも自分からあいさつをする
- 話しかけやすい雰囲気をつくる
- 相手によって態度を変えない
- 上から目線でも友達感覚でもない、ちょうどいい距離感
- 感情的にならず、落ち着いて接する
- 他部署ともきちんと連携を取る
- 公私混同しない
日常のコミュニケーションの中で、信頼感は自然と醸成されます。
特別な会話ではなく、普段の何気ない関わりが信頼関係を作り上げていくのです。
③明確な指示と素早い対応が、信頼につながる
- 指示は簡潔に、わかりやすく
- 頼まれたことにはすぐ対応する
- 指示待ちの職員に対しても、先回りして動き方を示す
伝える側が迷いなく動いているからこそ、受け取る側も動きやすくなります。
「この人のもとで働くとスムーズに進む」「働きやすい環境になってる」
そんな体験が、信頼感につながります。
④自分の言葉で伝えると、信頼が生まれる
- 思いを込めて話す
- 伝える内容に自分の考えを込める
- ただの“伝達係”ではなく、自分の言葉で伝える
誰かの言葉を借りただけの伝え方は、なかなか響きません。
自分なりの言葉で、自分の介護観や考えを込めて話すことで、「この人の言葉には重みがある」と感じてもらえます。
⑤学び続ける姿勢が、信頼につながる
- 介護について勉強している
- 情報を集めて考えを更新している
- 自分の介護観・意見を言葉にできる
現場は常に変化しています。
そんな中で、学び続けようとする姿勢は、「この人は考えて動いている」「自分なりに成長しようとしている」と映り、信頼につながります。
明日からできる!信頼関係を育てる関わり方

信頼は一朝一夕で手に入るものではありませんが、
「この人の言うことなら聞こう」と思ってもらえる関係性は、日々の小さな行動から育てることができます。
ここでは、明日から意識できる、シンプルで効果的な3つのアクションをご紹介します。
① あいさつを丁寧に返す
先に声をかけること、きちんと返すこと。
当たり前のようでおろそかになりがちなこの行動から、良好な信頼関係がスタートします。
② 小さなお願いを引き受ける
「これ、あとででいいので…」という小さなお願いに、なるべく早く応える。
こうした積み重ねが、「この人は話を聞いてくれる」「頼りになる」という印象につながります。
③ 伝える前に、まず相手を見る
何かを伝える前に、相手の様子を“観る”こと。
忙しそう?疲れてないかな?
そのひと呼吸が、言葉の伝わり方を大きく変えます。
まとめ

信頼されるリーダーになるために、特別な能力は必要ありません。
自分らしい関わり方を見直し、小さな積み重ねを意識すること。
それが、「言ったのに伝わらない」をなくしていくための第一歩です。
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