
記録が良くないと言われたけど、何を直したらいいのかわからない。
新人介護士さんから時々聞かれる悩みですね。

いまいちな記録なのはわかってるんだけど
どうしたらいいの…
僕がユニット型特養で10年以上介護士をする中で、正直いまいちな介護記録をたくさん見てきました。どうやったら伝わりやすい記録が書けるのか、今でも考えています。
良い記録を残すには、経験がものをいいます。
いろいろな記録を書いた経験と、読んだ経験です。
実は、介護福祉士の試験にも、記録に関する問題が時々出題されます。
この記事では、それを題材にして解説するので、経験のひとつとして記録の書き方をレベルアップしましょう。
この記事を読めば、いまいちな介護記録の修正ポイントがわかります。
なぜ修正した方が良いのか根拠を理解して、介護記録の基本を身に付けましょう。
介護福祉士試験の過去問
介護福祉士の試験で、介護記録についての問題は午前中の試験範囲である「領域 介護」の中の「コミュニケーション技術」です。
この「コミュニケーション技術」では、ご利用者さんとそのご家族とのコミュニケーションの取り方だけでなく、職員どおしでのコミュニケーションについても問われます。
さっそく実際の過去問を見ながら良い介護記録の書き方を考えてみましょう。
介護職の申し送り
介護職の申し送りについての問題です。
ご利用者さんに特別な変化を発見した時、他の職員へ申し送りをすると思います。
その時にどのように記録を残したらよいかという問題ですね。
介護職が申し送りで、利用者の状態を報告する時の発言として、最も適切なものを一つ選びなさい。
1「本日朝6時に少量の胃液を嘔吐した」
2「嘔吐したので、胃腸薬の服用が必要である」
3「気分が悪そうだったので、かわいそうに思った」
4「少しだけ嘔吐した」
5「嘔吐したが、排泄は順調であるため問題ないと思われる」
(第24回介護福祉士国家試験/問38)
正解は…
1です!
1も実際の現場ではかなり物足りない申し送りではありますが、試験問題なので文字数に限りがありますから仕方がないですね。
この選択肢の中では一番まともです。
ひとつずつ確認してみましょう。
1「本日朝6時に少量の胃液を嘔吐した」
いつ、何が起こったのかが明確で良いですね。
実際には、朝6時なんてずいぶん早い時間ですが、
嘔吐の前に飲食をしていたのか。
昨夕の食事はどうだったか。
は知りたいですね。
それから嘔吐なのでノロウイルスなどの感染が疑われるため、体温などのバイタル測定は必須ですね。
また、臥床中の嘔吐だったら誤嚥してしまった可能性も考えられるので、血中酸素飽和濃度も測る必要があるでしょう。
バイタルサインを測定したら必ず時間と数値を記録に残しましょう。
そのバイタルサインが異常値を示していたら、また一定時間経過後に再検してそれも記録に残しましょう。
客観的な事実があって、それに対してどういう行動をしたのかを記録に残すことが大切です。
2「嘔吐したので、胃腸薬の服用が必要である」
主観的すぎる記録ですね。
ここで胃腸薬の服用が必要かどうかは重要ではないですね。まずは、客観的な情報がないといけません。
「看護師と相談して1時間後に状態が落ち着いていたら胃腸薬を服用することにした。」とかならまだいいかもしれませんね。
3「気分が悪そうだったので、かわいそうに思った」
日記かw
なぜ気分が悪そうだと思ったのかを記録に残す必要があります。
顔色が普段より青白かったとか、呼吸が荒かったとかですかね。
かわいそうに思った、は不要ですね。心の中にとどめておいてください。
4「少しだけ嘔吐した」
回答1の劣化版ですね。
もっと具体的な情報が必要です。
5「嘔吐したが、排泄は順調であるため問題ないと思われる」
嘔吐と排泄の状況を関連付けるのは良いですが、根拠に乏しいですね。
これは記録の問題というよりも介護者の判断力がいまいちだった例です。
それにしても朝6時に嘔吐なんて最悪ですね。
職員は少ない時間帯だし、ぼちぼち利用者さんを起こさなきゃいけない時間でもあるから早番さんが来るまでは現場はぐちゃぐちゃでしょう。
想像しただけでもしんどいです。
朝6時に嘔吐なんて、経管栄養の方でしょうかねー。
記録の基本
記録の基本的な考え方の問題です。
介護保健サービスにおける記録に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 記録に含まれないものとして食事チェック表がある。
2 介護記録は介護福祉職の意見を中心に記録する。
3 調査・研究目的で記録を利用することは避ける。
4 主観的情報と客観的事実は区別しないで記録する。
5 利用者は記録の閲覧を請求することができる。
(第37回介護福祉士国家試験/問79)
正解は…
5です!
利用者さんやご家族から求められれば、それに応じて記録を提示する必要があります。
ひとつずつ確認してみましょう。
1 記録に含まれないものとして食事チェック表がある。
食事の提供は介護の業務ですから、食事チェック表も当然記録に含まれます。
食事量の変化は栄養状態の変化につながり、それがそのまま健康状態に直結するので、食事の記録は重要ですね。
また、ムセ込みの有無や食事時間の変化なども大切です。
お食事の好みに関する記録も本人の意向につながる重要な要素ですね。
2 介護記録は介護福祉職の意見を中心に記録する。
それらしい回答ですが×です。
利用者さんにはいろいろな専門職が関わってケアを提供しています。
結果的に介護福祉職の記録が多くなることはありますが、介護福祉職の意見を中心に記録する必要はありません。
専門職の意見も大事です。
3 調査・研究目的で記録を利用することは避ける。
個人情報に配慮した形であれば、調査・研究目的での記録の利用は問題ありません。
4 主観的情報と客観的事実は区別しないで記録する。
主観的情報は、大きく話を進展させる可能性がある一方で、思い込みによる間違いがある場合もあります。
記録に主観的情報を残すこと自体は問題ありませんが、客観的事実を中心に記録をする方が望ましいでしょう。
5 利用者は記録の閲覧を請求することができる。
記録は、職員がきちんと仕事をしたかどうかを証明するものでもあります。
誰が見てもわかるようにしておくのが理想でしょう。
まとめ
記録は5w1h「Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように) したのか。」を意識して、事実を客観的に伝えることが大切ですね。
たくさん記録を残して慣れることも大事ですが、他の職員が書いた記録を見て勉強するのが手っ取り早いと思います。
記録を見れば、その人の介護職としての能力がすぐにわかってしまいます。
良い記録を残せるように、介護職としての実力を身に付けていきたいですね。
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