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これで納得!?理想と現実のはざまで揺れる「特養の個室化問題」

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日経新聞20140901
2014年9月1日の日経新聞朝刊にて「特養ホーム、個室化遅れ 相部屋、条件付き容認」という記事が目に留まりました。

特養の個室化(ユニットケア)については、賛否あり様々な意見があります。
厚労省は2000年代初め、北欧をモデルに「個室と共有スペースを組み合わせたユニット型個室を原則とする」方針を打ち出しましたが、この度「プライバシーに配慮した相部屋であれば積極的に認める」方針に転換する方向で話が進んでいるようですね。

「特養の個室化問題」基礎知識

自分の頭を整理するためにも、なるべくわかりやすい言葉を選んでこの「特養の個室化問題」について書いていきたいと思います。
僕はユニット型の特養で介護職をしていますので、その現場の意見も少し書いていきますね。

まずは基礎知識から。

特養とは

「特別養護老人ホーム」、略して「特養」
特養を含め、下記のように色々な種類の介護施設があります。

  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • グループホーム
  • 軽費老人ホーム(ケアハウス)
  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護療養型医療施設(療養病床)
  • 養護老人ホーム

この中でも、一番介護を必要としている人が生活している施設が「特養」です。
「特養」は、介護度が高い人が優先的に入所できる仕組みになっています。

補足として、入居者の約80~90%が何らかの認知症をもっていますね。
ほぼ全員認知症です!
なぜそうなるのかっていうと、認知症だと介護度が高くなりやすいから。

介護度ってその人の介護にかかる「手間」を基準に決まります。
認知症の症状は、介護に「手間」がかかりやすいんですね。

例えば、食事を食事だと認知できない。ってなると食事を介助して食べさせなきゃいけない。
認知症で食事が自分で摂れない→食事の介助はめっちゃ時間がかかる→手間→介護度↑
って感じです。

従来型とユニット型

なんだか聞き慣れない言葉が出てきてしまいましたが、特養は大きく分けると2種類に分類されます。
それがこの「従来型」「ユニット型」です。

わかりやすく言い換えると、

  • 従来型=相部屋
  • ユニット型=個室

です。
「相部屋特養」「個室特養」ですね。
そういうわかりやすい言い方にしないのには何か理由がありそうですが、ここでは深く掘り下げません。

新聞記事「特養の個室化問題」

基本的なところを理解したところで新聞記事に戻りますが、簡単にいうとこういうことです。

昔の特養はみんな相部屋だった。

2000年代初め、厚労省が「これから新しく特養つくるなら個室じゃなきゃダメよ」とのお達しを出す。

やっぱり相部屋認めます。しかも積極的に!

といった流れですね。
おいおい、言ってることがブレまくっているじゃんって誰もが思うでしょ。

もちろんメリットデメリットがあるからブレるので、それを考えていきましょう。

「ユニット型(個室)」特養のメリットとデメリット

僕が自分の職場を「ユニット型特養」に決めた理由の一番は『自分が暮らすなら相部屋より個室だな』って思ったからです。
プライバシーが守られて自分のペースで生活できそうだといった理由からなのですが、これがユニット型特養の大きなメリットですよね。
もし、みなさんが重度の介護が必要になった時、相部屋と個室どっちで暮らしたいですか?

逆に、デメリットはコストがかかることです。
ここでいうコストとは『時間(人)とお金』ですね。

単純に介護職員の移動距離だけ考えてもユニット型は時間がかかります。
時間がかかる分だけ職員の負担は増えて、必要な人員が増えます。
人員が増えれば施設を維持するお金もかかりますし、その分利用者の負担を増やさざるをえません。

僕の考えが変わった話

先ほど「ユニット型特養」のメリットで『自分が暮らすなら相部屋より個室だな』って思ったと書きましたが、それは就職する前の話。
そこから数年たった今、考えは少し変わりました。

『重度の認知症だったら相部屋でもいいな。』
というのが今の考えです。また変わるかもしれませんけどね。

特養に就職するまでは、どういう人が特養で生活しているのかしっかりとイメージできていませんでした。
数年特養で勤めて、認知症が進行するとどんな感じになっていくのかがわかってきたので考えが変わりました。
家族への金銭的な負担などを考えれば、ぼくは相部屋でも構わないですね。

とあるご利用者さんの話

「ひとりで寝るのはさびしいわ。」ってよく言っています。
これは、昔は大家族で生活していたっていうことも関係があるのかもしれません。
特養の入居者は80代90代がほとんどなので、一人部屋っていうものに不慣れな方たちばかりなのかもしれませんね。

時代の流れ

日本では、少子高齢化が進んでいて、さらに進み続ける予想がたっています。
特養の需要はますます増え続けていくでしょうね。

その中で、効率の悪い「ユニット型」よりも「従来型」の方が需要を満たしていけるといった現実があります。

プライバシーを守り質の高い生活を送るという理想と、それを満たす施設も介護職員も足りないという現実がこの「特養の個室化問題」の難しいところです。

ぼくの結論

「特養」は基本的に「従来型(相部屋)」にして、「ユニット型(個室)」は待機者のバランスが取れるまで料金値上げ!

簡単な解説

  • 待機者が多いんだから効率の良い相部屋を基本にしよう。
  • 個室はプレミアムな扱いで、お金たくさん払える人だけね。

「特養」は公的な施設だから、料金値上げとか机上の空論かもしれませんが…。
普通のビジネスで考えたら需要ありまくりなのに価格を上げられないなんておかしいじゃんねえ。

参考リンク(外部サイト)

もっと詳しく知りたい人はこちらが参考になるかもしれません。
良かったらどうぞ。

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この記事を書いた人

●ユニット型特養12年目
●課長(特養、ショート、デイ、居宅、包括)
●元ユニットリーダー、施設ケアマネ
●介護認定審査員、介護福祉士実習指導者、技能実習指導員
●介護福祉士、介護支援専門員

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